私の朝は、いつも小さな戦いから始まっていました。出かける直前になって、「あれ、鍵はどこ?」と、カバンの中を引っ掻き回す。ようやく見つけて家を出ても、駅に向かう途中で、「待てよ、玄関の鍵、ちゃんと閉めたかな?」という、あの嫌な不安の波が、決まって押し寄せてくる。その度に、私は何度、家まで引き返したことでしょう。そんな、ストレスフルな日常に終止符を打つべく、私はついに、玄関ドアへの「後付け電気錠」の導入を決意しました。我が家は賃貸マンションなので、工事不要の両面テープで取り付けるタイプの中から、評価の高い製品を一つ選びました。費用は約三万円。これで長年の悩みから解放されるなら、安いものだと感じました。製品が届いた週末、私はドライバーも何も使わず、ただ、説明書と、脱脂用のアルコールだけを手に、取り付け作業に臨みました。ドアのサムターン周りを念入りに拭き、位置決めをして、息を止めて本体を貼り付ける。作業は、思った以上に簡単で、三十分もかからずに完了しました。そして、スマートフォンのアプリと連携させ、初期設定を終えた後、私は初めての「デジタル解錠」を試みました。アプリのボタンをタップすると、「ウィーン」という、静かで未来的な作動音がして、目の前の扉のロックが、カチャリと開いたのです。その瞬間、私は、まるで新しい時代の扉を開いたかのような、小さな興奮を覚えました。その日から、私の生活は、本当に変わりました。朝の鍵探しは、過去の遺物となりました。そして何より、私を長年苦しめてきた「閉め忘れの不安」が、オートロック機能によって、完全に消え去ったのです。ドアが閉まると、数秒後に「ガチャン」と施錠される、あの頼もしい音。それは、私の心に、何物にも代えがたい平穏をもたらしてくれました。子供が学校から帰宅すると、アプリに「解錠されました」と通知が届くのも、共働きで留守にしがちな我が家にとっては、大きな安心材料となりました。失ったのは、日々の小さなストレス。得られたのは、貴重な時間と、心の平穏。後付け電気錠は、単なる便利な道具ではなく、私の暮らしの質そのものを、確実に向上させてくれた、最高の投資だったと、今、心から実感しています。
私が玄関に電気錠を後付けした日