徘徊防止のために、玄関の外から鍵をかける。それは、交通事故などの屋外でのリスクから、家族を守るための有効な手段です。しかし、その一方で、私たちは、もう一つの、そして、より深刻なリスクに、目を向けなければなりません。それは、火災や地震といった、緊急災害が発生した際に、中にいる人が自力で屋外へ避難できなくなるという、「屋内でのリスク」です。煙が充満し、一刻を争う状況で、玄関の扉が外から固く施錠されていたら。そう想像するだけで、その恐ろしさに身がすくむ思いがします。この、徘徊防止と、緊急時の避難という、二律背反の課題を、テクノロジーの力で解決しようというのが、「火災報知器連動型」の電気錠システムです。これは、室内に設置された煙感知器や熱感知器が、火災を検知して警報を発すると、その信号と連動して、玄関の電気錠が「自動的に解錠される」という、画期的な仕組みです。このシステムがあれば、たとえ玄関が外から施錠されていたとしても、火災発生時には、中にいる人が自力で避難したり、あるいは、駆けつけた救助隊が、スムーズに室内へ進入したりすることが可能になります。これにより、徘徊防止という日常の安全確保と、火災時という非日常の安全確保を、高いレベルで両立させることができるのです。この連動型システムには、いくつかのタイプがあります。既存の錠前に後付けで設置できるスマートロックの中にも、別売りの煙感知センサーと連携できる製品が登場しています。また、より本格的なものとして、錠前メーカーが販売している、防災・防犯システムと一体化した、業務用の電気錠システムもあります。もちろん、これらのシステムの導入には、決して安くはない初期費用がかかります。しかし、かけがえのない家族の命を守るための、最も確実な投資であると考えることもできます。外から鍵をかけるという選択をする以上、この「命の出口」を、いかにして確保するかという問題から、私たちは決して目を背けてはならないのです。
火災時のリスクと連動型解錠システム