ある築三十年の木造住宅にお住まいの高齢のご夫婦から、将来のバリアフリー化を見据えて、リビングと廊下を仕切る開き戸を引き戸に交換したいという依頼をいただきました。開き戸は開閉の際に身体を前後に動かす必要があり、将来車椅子を利用することになった場合や、足腰が弱くなった際の転倒リスクが高いという懸念があったためです。今回の工事事例では、既存の壁を壊さずに設置できる「アウトセット引き戸」を採用しました。これは壁の外側にレールを設置してドアを吊るす方式で、通常の大がかりな引き戸工事に比べて費用と工期を大幅に抑えることができます。具体的な費用の内訳を挙げると、アウトセット引き戸本体と専用レールの部材代で約八万円、既存ドアの撤去と枠の補修、レールの取り付け工賃で約六万円、合計で十四万円(税別)となりました。もし壁を解体して壁の中にドアを収納する「引き込み戸」にする場合は、壁の造作工事やクロス貼り替えが必要となり、三十万円以上の費用がかかっていたところです。工事はわずか一日で完了し、お客様からは「軽い力でスライドさせるだけで開くようになり、移動が本当に楽になった」と大変喜んでいただけました。また、引き戸にすることで、ドアが廊下側に飛び出すことがなくなり、家族が通りかかる際に出合い頭でぶつかる危険も解消されました。室内ドアの交換においては、単に同じ形状のものに替えるだけでなく、生活スタイルの変化に合わせて形式そのものを見直すことが、バリアフリーリフォームの要となります。特に高齢者のいる世帯では、ドアの重さやレールの段差の有無も重要なチェックポイントです。今回の事例のように、アウトセット方式を活用すれば、大がかりな予算をかけずとも安全性を飛躍的に高めることが可能です。ただし、アウトセット引き戸を設置するためには、壁側にドアがスライドするための十分なスペースが必要であり、コンセントの位置やスイッチの場所によっては移設工事が必要になることもあります。事前の現地調査でこれらの障害を一つずつクリアしていくことが、スムーズな工事と追加費用の発生を抑える鍵となります。住まいの形を生活に合わせるという視点を持つことで、室内ドア交換の費用は将来の安心への先行投資として大きな価値を持つことになります。修理か交換かを迷った際は、その不具合が「表面的なもの」か「構造的なもの」かを見極め、業者の見積もりを比較する際に「あと何年使い続けたいか」という自身のライフプランと照らし合わせることが、後悔しない室内ドアリフォームの鍵となります。
開き戸を引戸に変える工事の事例