大切な家族を徘徊の危険から守りたい一心で、玄関のドアに外から鍵をかける。この行為は、介護の現場では、やむを得ない選択として行われることがありますが、その一方で、法的な観点からは、非常にデリケートで、慎重な配慮が求められる問題を含んでいます。それは、この行為が、状況によっては「監禁罪」に問われる可能性を、ゼロとは言い切れないからです。刑法における監禁罪は、「不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する」と定められています。ここで言う「監禁」とは、人が特定の区画された場所から、脱出することを不可能、あるいは著しく困難にさせる行為を指します。玄関の外から鍵をかけ、本人の意思で外に出られないようにする行為は、この定義に該当する可能性があるのです。しかし、実際の司法の場では、その行為の「違法性」が、総合的に判断されます。つまり、その行為が、本人の生命や身体を危険から守るという「正当な目的」のために、他に代替手段がなく、かつ、その方法が「社会通念上、相当と認められる範囲」で行われたものであれば、違法性はない、と判断される可能性が高いのです。この「相当性」を判断する上で、極めて重要になるのが、前述の「緊急時の避難経路が確保されていたか」という点です。もし、火災報知器との連動などの安全対策が一切講じられておらず、火災によって本人が亡くなってしまった、というような最悪のケースでは、介護者の責任が問われる可能性は、格段に高まります。また、こうした重要な判断を、家族だけで内々に行ってしまうのではなく、ケアマネージャーや医師、地域包括支援センターといった、第三者の専門家と十分に相談し、その指導や助言に基づいて行っていた、という客観的な事実も、その行為の正当性を裏付ける上で、非常に重要になります。外から鍵をかけるという選択は、法的なリスクを正しく認識し、専門家と連携しながら、何重もの安全対策を講じた上で、初めて許容される、極めて重い決断なのです。
外から施錠する行為と法的な問題