ポストに溜まった郵便物を取り出したいのに、鍵が回らない、あるいはダイヤルが動かない。そんな時、イライラする気持ちから、つい力ずくでこじ開けようとしてしまうかもしれませんが、それは事態を悪化させるだけの、最も危険な行為です。専門業者を呼ぶ前に、まずは落ち着いて、自分で試せるいくつかの応急処置があります。その原因と対処法を、トラブルのパターン別に見ていきましょう。まず、鍵を差し込んで回す「シリンダーキー」が回らない場合。その最も多い原因は、長年の使用による「鍵穴内部の汚れや錆」です。屋外に設置されているポストは、雨風や砂埃の影響を直接受けるため、鍵穴の内部は想像以上に汚れています。この場合、まず試してほしいのが、掃除機のノズルを鍵穴に当てて、内部のゴミを吸い出すことです。これだけで、動きが改善することも少なくありません。それでも固い場合は、潤滑剤を使いますが、ここで絶対にやってはいけないのが、市販の機械用潤滑油(CRC-556など)を注入することです。油が内部で埃と固まり、完全に動かなくなる原因となります。必ず、「鍵穴専用」と明記された、速乾性のパウダースプレータイプの潤滑剤を使用してください。次に、「ダイヤル錠」の番号を忘れてしまった場合。誕生日や記念日など、心当たりのある番号を試すのが第一ですが、それでも開かない場合は、「総当たり」という最終手段があります。三桁のダイヤルなら千通り、四桁なら一万通りですが、時間に余裕があれば、根気よく試すことで、ポストを壊さずに開けることが可能です。そして、鍵が鍵穴の中で折れてしまった場合。これは、もはや素人が手を出せる範囲を超えています。ピンセットなどで無理に引き抜こうとすると、破片を奥に押し込んでしまったり、シリンダーを傷つけたりして、確実に錠前ごと交換になります。この場合は、何もせずに、速やかにプロの鍵屋を呼ぶのが最善の策です。自分で対処できることと、プロに任せるべきこと。その境界線を正しく見極める冷静さが、問題を最小限の被害で解決するための鍵となります。
開かないポストの鍵と格闘する前に試すこと