鍵が鍵穴から抜けなくなってしまった。しかし、専門業者を呼ぶ前に、もし自分でできることがあるのなら、試してみたい。そんな時に、錠前を傷つけるリスクが比較的少なく、かつ効果が期待できる、いくつかの「優しい」応急処置が存在します。ただし、これらの方法を試す大前提は、「絶対に無理な力を加えない」ことです。少しでも抵抗を感じたら、すぐに中断する勇気が重要です。まず、最初に試してほしいのが、「鍵を、施錠・解錠ができる正しい位置に戻す」ことです。鍵が抜けるのは、基本的に、鍵穴が垂直または水平になった、特定の「抜き差し位置」だけです。焦っていると、中途半端な角度で抜こうとして、引っかかっている場合があります。もう一度、鍵をゆっくりと、施錠方向、あるいは解錠方向に、ほんの少しだけ回してみてください。そして、カチッと定位置にはまる感触があったら、そこでまっすぐに引き抜いてみます。次に、鍵をその正しい位置に保ったまま、「小刻みに、上下左右に揺らしながら、ゆっくりと引き抜く」という方法です。長年の使用で、鍵やシリンダーがわずかに摩耗し、ピンとの間に微妙な引っかかりが生じている場合、この小刻みな振動で、その引っかかりが外れることがあります。あくまで、ミリ単位で、優しく揺するのがコツです。さらに、鍵穴専用の潤滑剤が手元にあれば、それを使ってみるのも一つの手です。油分を含まない、速乾性のパウダースプレータイプのものを、鍵と鍵穴の隙間に、ごく少量だけ吹き付けます。数分待って、潤滑剤が内部に行き渡った後で、再度、鍵をゆっくりと引き抜いてみましょう。そして、意外な盲点となるのが、ドア自体にかかっている「テンション」です。ドアが歪んでいたり、強風に煽られたりして、デッドボルト(かんぬき)がドア枠に強く圧迫されていると、鍵が抜けなくなることがあります。この場合は、ドアノブを引いたり押したりして、ドアのがたつきを利用しながら、鍵を引き抜いてみてください。これらの優しい応急処置で解決しない場合は、内部で深刻な問題が起きている証拠です。潔く、プロに助けを求めましょう。