亡くなった親族の遺品整理を行っている最中、押し入れの奥から見慣れない金庫が出てくるという状況は、相続の手続きにおいて非常に重要な局面となります。しかし、多くの場合、その金庫の鍵がどこにあるのか分からず、暗証番号の控えも見つからないため、専門業者に開錠を依頼せざるを得なくなります。遺品整理に伴う金庫の鍵紛失トラブルは、一般的な紛失とは異なる特有の難しさがあります。ある事例では、築五十年以上の古い住宅から、現在は製造されていないメーカーの重厚な業務用金庫が見つかりました。依頼を受けた業者が調査したところ、鍵穴は特殊な構造をしており、さらにダイヤル部分も長年の放置により固着しかけている状態でした。このようなケースでは、通常のピッキング開錠が通用せず、最新の機材を用いた高度な作業が必要となります。この事例での開錠料金は、基本出張費が八千円、シリンダーの高度開錠技術料が三万五千円、そして固着したダイヤルの調整費用が一万五千円となり、合計で五万八千円に達しました。家庭用金庫であれば一万円台で済むことも多いですが、古い業務用金庫や大型の耐火金庫になると、作業時間も数時間に及び、料金も跳ね上がる傾向にあります。また、別の事例では、金庫の中に重要な権利証や遺言書が入っている可能性があったため、中身を傷つけないように細心の注意を払った非破壊開錠が求められました。業者はマイクロスコープを鍵穴に挿入し、内部構造を解析しながら慎重に解錠を進めました。この場合の料金は、通常の破壊開錠よりも高額になりますが、金庫を再利用できるというメリットもあります。遺品整理における金庫開錠で注意すべきは、相続人全員の同意が得られているかどうかという点です。業者側もトラブルを避けるために、立ち会い人の確認や委任状の提示を求めることが一般的です。料金の支払いについても、相続財産の中から支払うのか、あるいは個人の持ち出しにするのかを事前に決めておくことが望ましいでしょう。金庫を開けるという行為は、故人の歩みを紐解く作業でもあります。開錠料金は決して安くはありませんが、その扉の向こうにある大切な思い出や権利を守るためには必要な投資です。事例から分かる通り、金庫の状態や種類によって料金は数倍の幅があるため、遺品整理の一環として計画的に予算を確保し、実績豊富な業者に依頼することが、円滑な相続手続きと心の整理に繋がります。
遺品整理で見つかった金庫の鍵紛失トラブルと開錠料金の事例研究