「うちの近所は治安が良いから、ポストに鍵なんてかけなくても大丈夫」。そんな風に、楽観的に考えていませんか。しかし、その無防備なポストが、あなたの知らないところで、個人情報を狙う犯罪者たちにとっての、格好の「入り口」となっているとしたら、どうでしょう。郵便物の窃盗は、単に手紙がなくなるという話では済みません。それは、あなたのプライベートな情報を丸裸にし、ストーカーや詐欺といった、より深刻な犯罪被害へと繋がる、極めて危険な行為なのです。犯罪者が、無施錠のポストから狙うのは、お金や金券だけではありません。彼らが本当に欲しているのは、そこに眠る「個人情報」です。例えば、クレジットカード会社からの利用明細書。ここには、あなたの氏名、住所はもちろん、カード番号の一部や、あなたが「いつ、どこで、何に、いくら使ったか」という、極めて詳細な行動履歴が記録されています。この情報だけでも、あなたのライフスタイルや経済状況を、かなり正確に推測することができてしまいます。また、市役所からの税金の通知書や、金融機関からの手紙は、あなたが安定した収入や資産を持っていることの証明となり、詐詐グループのターゲットリストに加えられる格好の材料となります。電力会社やガス会社からの検針票には、あなたの生活リズムを推測させるヒントが隠されています。さらに、何気ないダイレクトメールでさえ、あなたの趣味や嗜好を分析するために利用されるのです。これらの盗み出された情報は、単独でも価値がありますが、複数の情報を組み合わせることで、その危険性は飛躍的に増大します。そして、犯人は、全ての郵便物を盗むとは限りません。一見、何も盗られていないように見えても、彼らにとって価値のある特定の封筒だけを、巧みに抜き取っていくのです。だからこそ、私たちは気づきにくい。この静かで、しかし深刻な脅威から、自分自身と家族を守るために、私たちにできる、最も簡単で、最も効果的な対策。それが、毎日、ポストに「カチリ」と鍵をかけるという、たった一つの習慣なのです。あなたの個人情報は、あなたが思う以上に、狙われています。